災害時の非常用食料として、まず最初に思い浮かぶのは、賞味期限が長く設定されている保存用食料品の存在かと思います。
日本は高温多湿の環境のため、特に夏場は物が腐りやすくカビやすいという気候的な問題があります。
そのため、缶詰やできるだけ水分を飛ばし水で戻して食べるといった乾物的なものが非常用食料品としてたくさん商品が発売されています。
賞味期限が年単位のこれらの商品は、保存方法を極端な状態にしなければ数年単位で持つのが当たり前な食品群ですが、それでも全く賞味期限が無いというわけでは有りません。
避難が必要な大災害は早々起こるものではありませんので、保存していた食料がいざという時に賞味期限が切れてしまっていた…などということも可能性としては十分にありえます。
そこで今回は、そんな有事の時の賞味期限切れなどを防ぐ、ローリングストック法について解説していきます。
ローリングストックとは
出典:https://www.bousaikan.jp/tokusyu/161029.html
長期保存できる食料を備蓄するのは大切なことですが、普段から食料を備蓄しながら、日ごろの生活に取り入れることも考えられます。
例えば、普段から多めに買い物をして、使い切った分だけ買い足すことで、家に常に一定量の食料を備蓄する方法があります。
これをローリングストックといいます。
ローリングは回転、ストックは備蓄のことを指します。
ローリングストックのポイントは、普段の生活で食料を消費しながら備蓄していくことです。
例えば山の中にあるダムは常に同じ水が溜まっているわけではなく、上流から流れてきた水を取り込み、溜まっていた水を下流に流すことで一定の入れ替えをおこなっているのです。
それと同じことで、購入した食料を使い切り、消費した分だけ新しく買い足すことで、常に一定量の食料を維持することができます。
また、賞味期限内の鮮度の良い食品が保たれ、万が一の時にも生活に近い食生活が続けられることが期待できます。
ローリングストックのポイント
この方法のポイントは2つあります。
まずは、「古いものから使う」ということです。
備蓄しているものは、長い期間使用しないために、賞味期限が切れている場合があります。
そのため、「右側に新しいものを配置し、左側から古いものを使う」という循環を心がけましょう。
これによって、古いものが廃棄されずに無駄なく使用できるうえ、期限切れのものを食べることによる健康被害も防ぐことができます。
次に、もう一つのポイントは「使った分は必ず補充する」ということです。
例えば、期限が近い缶詰を使用した場合、すぐに補充しなければなりません。
災害は発生時期の予測がなかなかつかないため、備蓄品を適切に管理し、常に補充できるようにしておくことが大切です。
もし期限が過ぎたものがあった場合には、その都度処分して、新しいものに入れ替えるようにしましょう。
ローリングストックを適切に管理することで、食料や日用品の廃棄を防ぎ、無駄を省くことができます。
ローリングストックのメリット
ローリングストックを行うことで、考えられるメリットを羅列していきます。
定期的な消費で、非常食の味に慣れることができる
万が一に備えて、災害時に食べる非常食は、普段の食生活と異なるものを摂ることが多く、心身に大きな負担をかけます。
しかし、ローリングストック法を実践することで、定期的に非常食を食べる習慣をつけることができ、災害時にも普段と同じく食べ慣れた食事を摂ることができます。
また、気に入らない非常食があれば、別のものに変えることも可能です。
賞味期限を神経質に気にする必要がない
従来、非常食を備蓄する際には、保存期間の長いものを多量に買い、消費期限が近づくと一気に食べるといった方法が一般的でした。
しかしこの方法には、「消費期限が切れてしまい、廃棄せざるを得ない」、「毎日同じものを食べることになって飽きる」などの失敗例が少なくありませんでした。
ローリングストックで定期的に消費していれば、このような極端な偏りを減らすことができますし、賞味期限も長い食品が多いので、順番などもあまり気にせずに好きなように食べることができるのです。
非常食を選ぶ際に賞味期限を気にする必要がほとんどない
非常食の保存期間は1年から25年と幅広く、賞味期限を統一する必要がないとされます。
ローリングストック法の場合は、定期的に非常食を消費することが前提となるため、賞味期限を気にすること必要がほぼありません。
また、さまざまな種類の非常食から自由に選ぶことができるため、飽きずに備蓄を続けることができます。
ローリングストックのデメリット
では今度は、ローリングストックにおけるデメリットも考えてみたいと思います。
鍋や皿、器など、調理器具が必要となる場合がある
ローリングストック法に採用されることが多いカップラーメンなどのインスタント食品。
例えばカップラーメンを食べるには、それ単体では食べられず、お湯が必要なのでカセットコンロ、やかんが必要になりますし、また箸などの調理器具やレトルト食品の場合は食器も当然必要です。
ローリングストック法によく採用されているインスタント食品やレトルト食品は、調理器具や食器を用意するという手間がかかってしまうのが結構あります。
それなりの保管スペースが必要となる
上述の通り、レトルト食品に加えて、食器や調理器具が必要となりますから、当然、その分、荷物も増えます。
普段の収納場所を確保することが必要となり、手狭な家ではその分台所などの保管スペースが逼迫される可能性があります。
レトルト食品を食べない家庭や食べ慣れていない家庭には向かない
レトルト食品はある程度味の傾向が似ており、味そのものが苦手、という家庭では、定期的に食べるという習慣が身に付きにくく、食べること自体にストレスを感じてしまう場合があります。
ストレスを感じてまで、ローリングストックを行う必要があるかは一考の余地があるでしょう。
農林水産省公開の『災害時に備えた食品ストックガイド』が非常におすすめ!
国の機関である、農林水産省がネット上に公開している「災害時に備えた食品ストックガイド(平成31年3月)」は非常に参考になります。
PDFファイルにて、要点がうまくまとまっており、普段なかなか気づけ無いようなことが詳細に記載されています。
ローリングストックについても記載がありますし、乳幼児や高齢者、アレルギーを持つ人などの備蓄のポイントや注意点などがきれいにまとまっています。
PDFファイルで、様々な項目で要点がまとめられていますので、平時にスマートフォンなどの端末にPDFをDLして、いつでも見れるようにしておけば、いざというときに役立つかと思います。
ローリングストックを日頃からやることで、防災意識を高めよう!
ローリングストック法には、上記したようにいくつかのメリットとデメリットがありますが、この方法は、非常食を買った後、賞味期限が近づくまで、忘れてしまいがちな意識の改善にも役立ちます。
ローリングストック法を採用すれば、5年保存にこだわらず、3年保存や1年保存の非常食も選べます。
そのため、備蓄する非常食のバリエーションが豊かになります。
最近の非常食は、普段の食事としても美味しくいただくことも可能です。
また、普段から食べ慣れておけば、いざという時にもストレスを感じにくく、安心できます。
さらに、この方法を採用することで、「備蓄をずっと継続できる」という最大のポイントがあります。
毎月1度防災について考えるきっかけにもなり、防災意識の継続にも繋がります。
継続は力なり!食べ物も、心も、災害に備え続けましょう。