災害時最大の問題…トイレパニックとは?

大地震などに被災した時に、問題になることはどんなことが考えられるでしょうか?

家などが壊れて、夜露を凌ぐ場所がなくなる住居の問題か?

ライフラインが破壊されてしまい、食べることができない食糧問題か?

それとも、命をつなぐ水不足などが問題でしょうか?

確かに、どれも人間が生きていくには欠かせないもので、どれも深刻に考えなければいけない問題と言えるでしょう。

しかし、場合によってはそのどれよりも優先されるべきかもしれない問題があります。

それが、今回記事にするトイレパニックトイレに関する問題なのです。

一体どういうことなのか?トイレパニックということばの解説とその問題点や対策について触れていきます。

トイレパニックとは?

人間が生きていくのに欠かせないものというのは、幾つもあります。

先に触れた住むところ、そして水や食料の摂取。

人は食べていかなければ餓死しますし、水が無くなっても生命活動が維持できなくなります。

また、夜露をしのげる住む場所が無ければ、夏場では熱中症、冬には凍死などのリスクも出てくるでしょう。

これらの維持は、人間が生きるためには必要不可欠と断言していいでしょう。

しかし、これらの要素は大災害が起きて、自分の家に留まることが困難になったときに近くの自治体が開設する避難所などに逃げ込めば、不便があるとはいえどれもある程度はなんとかなるものです。

避難所であれば、建物の中ですので夜露はしのげますし、またすぐに来ないとは思いますが、水や食料の配給は大災害の時は確実に行われます。

もちろん、その間の生活には不便ではあるものの、生命活動の維持するための最低限の栄養などはなんとかなります。

備蓄があれば、ある程度の食生活なども維持できるわけで、こちらは避難中の間、ある程度我慢すればいいものになっています。

しかし、これとは別でどうしても人間が生きていくことで必ず起こることがあります。

それが生理現象…すなわち、トイレを利用した排泄行為ということになります。

どんなに屈強で健康な人間であろうと、生理現象を我慢し続けることは誰にもできません。

トイレパニックとは、災害時に於けるトイレ関連での重大な問題が発生することを指します。

トイレパニックということばが生まれたのはいつ?

トイレパニックという概念が生まれたのはいつか?

それは、1995年に発生した阪神淡路大震災がきっかけだと言われています。

直下型地震で、神戸の街を襲った大震災は、犠牲者を6400人以上出す大災害となりました。

多くの犠牲者を出すのと同時に、神戸の街は激しく破壊されたいへんな惨事となりましたが、その時に避難所の水洗トイレの機能が停止してしまい、トイレが排泄物であふれてしまうという状況になってしまったとのことです。

日本のトイレシステムは、非常に機能的で効率的なサイクルが形成されていますが、逆に体系だったそのシステムの中で一つでも問題が発生すると、途端にトイレが使えないという状況に陥ってしまうのです。

出典:https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/106.html

2016年に起こった熊本地震では、その被災者に避難生活初期に困ったことをアンケートしたところ、トイレ問題は食料問題などよりも困ったことに挙げた人が多かった結果が出ています。

出典:「平成28年熊本地震『避難生活におけるトイレに関するアンケート』結果報告」(調査:岡山朋子(大正大学人間学部人間環境学科)、協力:NPO法人日本トイレ研究所)

ライフラインが破壊されてしまうことも珍しくない、大地震などの激甚災害では、トイレが使えなくなってしまうという状況が容易に起こってしまうということなのです。

トイレパニックが起こることでの問題点

トイレが利用できないということは、想像以上に大きな問題点を幾つももたらします。

その中で、避難生活において深刻な問題になる点を幾つか挙げていきます。

1.感染症のまん延

トイレが故障し、人々の排泄物であふれるとまず困るのは感染症です。

人の排泄物には、様々な雑菌やウイルスであふれており、排泄物があふれることによって、感染症のまん延のリスクが非常に高まります。

特にトイレは触るところが、大体の人が一緒(ペーパーホルダーや便座など)なので、感染症にかかってしまうリスクが非常に高いと言えます。

避難生活が長引けば、ストレスなどで免疫力が下がることも想定されるので、感染症への罹患リスクはますます高くなってしまうことになります。

当然、人から人への感染ということも可能性としては十分ありえるでしょう。

2.ストレスの増大

トイレというのは、日常の閉鎖空間と言えます。

トイレで一人用を足す時に、心が落ち着くという人も結構いるのではないでしょうか。

ところがトイレパニックが起こってしまうと、普段のトイレ利用状況とは違う状況が生まれます。

排泄物がうまく処理されないことでの嫌悪感や、不潔感、あとは多くの人が同じトイレを使うことで、神経質な方はそれだけで大きなストレスが貯まる可能性があります。

避難生活自体が大きなストレスですから、トイレでも更にストレスが貯まるとなると、免疫力の低下であったり健康を害する可能性も高くなってしまいます。

避難生活で、そのような体調不良などになると、かなり大変になるのでトイレパニックがそのリスクを増大させるということになってしまうのです。

3.水分を控えることによる健康面への悪影響

トイレパニックが起こったとき、想像して頂くのは容易かと思いますが、できるだけトイレに行きたくないと考える人がほとんどでしょう。

そうなると当然ながら、トイレに行ってしまうような行為…つまりできるだけ水分を控えるということを行ってしまう可能性が高くなると考えられます。

水分を控えてしまうと、例えば脱水症状やエコノミークラス症候群などの症状が発生する可能性が高くなってしまいます。

水分が無いと人間は生きられないので、適度な水分補給が必要不可欠ですが、トイレに行きたくないという気持ちを優先してしまい、水分補給が適切に行われなくなってしまうリスクがあるということです。

先に述べたような症状は、場合によっては命の危険すらあり得る症状になりますので、これらの問題が起こらないようにトイレに関しては対策を予めしておく必要があるといえるのです。

トイレパニックの対策は?

このように問題点を書いていくと、トイレパニックは災害時において、かなり深刻な問題であることがご理解いただけるかと思います。

それでは、トイレパニックに対する対策はどうすればいいのか?

まず、流石に水洗トイレの快適さを求めることはできませんが、災害用の簡易トイレを備蓄しておくという方法があります。

簡易トイレは、災害時に利用することを前提に作られている商品が多く、災害時の排泄時に起こる問題をできるだけ解消できるようなコンセプトの元、作られているものがほとんどです。

元々ある便器に取り付けて利用するものもあれば、携帯トイレのように独立している商品もありますので、自分が被災した時のことを考えて、できるだけトイレは快適にできるような備えをしておく必要があるでしょう。

また、自治体によってはマンホールトイレといって、マンホールの蓋を外して、そこから簡易トイレ設備を作り、排泄物が直接下水道に流れるような措置を取れるように準備しているところもあるようです。


災害被災時に、誰もが逃れることができない生理現象。

熊本地震の時の統計によると、地震発生後、4割もの人が3時間以内にトイレに行きたくなったという統計もあるようです。

いずれにしても、大災害時にはトイレ問題が必ず発生するものと考えた上で、トイレパニックに対応できる対策をとっておくことは必須と言えるのではないでしょうか。


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