この記事の結論
大雨のときの避難は「避難所へ行く」だけではありません。安全な場所にある親戚・知人宅、ホテル、浸水しない自宅の上階も立派な避難先です。大事なのは「わが家のリスク」を先に知り、行き先を2つ以上決めておくこと。そのうえで、明るいうち・雨が本降りになる前に動きます。夜間や道路の冠水後は、無理に外へ出ず垂直避難に切り替えます。

この記事は2026年9月7日時点の情報でまとめています。避難の判断は、お住まいの自治体が出す避難情報と、気象庁「キキクル」の危険度を必ずあわせて確認してください。避難のタイミング(逃げどき)そのものについては大雨・洪水に直面したら―警戒レベルと「逃げどき」に、大雨全般の備えは大雨・洪水・土砂災害から命を守る完全ガイドにまとめています。
「避難=避難所へ行く」ではない―4つの選択肢
「避難」とは難を避けることで、指定避難所に行くことだけを指すのではありません。内閣府も、感染症対策や避難所の混雑を避けるため、避難先を分ける「分散避難」を呼びかけています。大雨のときに取りうる行き先は、大きく4つです。
- 指定緊急避難場所・指定避難所
自治体が定めた施設。洪水・土砂災害など災害の種類ごとに使える場所が違うので、ハザードマップで「洪水に対応」と書かれている所を確認します。 - 安全な場所にある親戚・知人の家
浸水想定区域や土砂災害警戒区域の外にある家なら、避難所より落ち着いて過ごせます。前もって「大雨のときは行かせてほしい」と頼んでおくのがポイントです。 - ホテル・旅館
内閣府も「もう一つの避難所」として活用を進めています。高台にある宿を早めに予約すれば、家族やペットと安全に過ごせます。台風接近が数日前に分かるときに向いた方法です。 - 自宅の上階など(在宅避難・垂直避難)
自宅が浸水想定区域の外、またはマンションの浸水しない階なら、無理に移動せず自宅にとどまるほうが安全なこともあります。
参考: 内閣府「ホテル・旅館等への避難について」 / 内閣府「避難所の生活環境対策」
わが家の避難先を決める手順
風雨が強まってから考え始めると、選択肢がどんどん減ります。晴れている今のうちに、次の順で決めておきましょう。
- ハザードマップで自宅のリスクを調べる
国土交通省「重ねるハザードマップ」や自治体のマップで、自宅が洪水浸水想定区域/土砂災害警戒区域/高潮浸水想定区域に入っているか、想定される浸水の深さは何メートルかを確認します。 - 「立ち退き避難」か「屋内安全確保」かを判断する
浸水の深さが自宅の階数で対応できない、家屋の倒壊・流失のおそれがある区域、土砂災害警戒区域内、地下室がある――このいずれかなら、原則その場を離れる「立ち退き避難」です。当てはまらなければ、上階への「屋内安全確保」も選べます。 - 行き先を2つ以上、経路つきで決める
第一候補(例:親戚宅)と第二候補(例:指定避難所)を用意し、それぞれ川・用水路・アンダーパスを通らない経路を地図で確認します。夜でも歩ける道か、昼のうちに一度歩いてみると安心です。 - 避難を始めるタイミングを家族で共有する
高齢者・小さな子ども・体の不自由な方がいる家庭は「高齢者等避難」(警戒レベル3)で移動開始。それ以外の人も「避難指示」(レベル4)までに避難を完了させます。この時系列はわが家の「マイ・タイムライン」の作り方で表にできます。
参考: 国土交通省「ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)」 / 内閣府「避難情報に関するガイドライン」
「垂直避難」に切り替える判断
避難先を決めていても、移動そのものが危険な状況では外に出るべきではありません。次のようなときは、自宅や近くの頑丈な建物の2階以上・斜面と反対側の部屋へ移る「垂直避難」に切り替えます。
- すでに周囲の道路が冠水している(水面下のマンホールや側溝が見えず、転落のおそれ)
- 暴風・豪雨で視界が悪く、傘もさせない
- 避難所までの経路が川沿い・用水路沿い・アンダーパスを通る
- すでに夜間で、足元が見えない
「垂直避難」はあくまで、立ち退き避難が間に合わなかったときの次善の策です。木造家屋が流失するおそれのある区域では上階も安全とは限りません。だからこそ、明るいうち・雨が本降りになる前の早めの避難がいちばん確実です。
避難先ごとの持ち物と準備
共通で持って出るもの
- 常用薬・お薬手帳、保険証・身分証のコピー、現金(小銭も)
- スマホとモバイルバッテリー(満充電)、充電ケーブル
- 飲料水、すぐ食べられる食料、タオル、着替え、雨具、歩きやすい靴
- 携帯トイレ、ウェットティッシュ、マスク、常備薬、メガネ・コンタクト予備
行き先別に足すもの
- 指定避難所へ…床が固く冷えるので、レジャーシート・エアマット・毛布・耳栓・アイマスク。プライバシー確保に大判ストールがあると便利。
- 親戚・知人宅へ…数日分の食料や日用品を持参し、相手の負担を減らす。着いたら家族に居場所を共有。
- ホテルへ…早めに予約し、キャンセル規定を確認。ペット可か、駐車場が高台かも要チェック。
- 在宅・垂直避難…水・食料・携帯トイレ・明かりを多め(最低3日、できれば1週間)に。停電でエレベーターやポンプが止まる前提で、飲用水を上階に上げておく。
要配慮者・ペットがいる家庭の注意点
- 高齢者・体の不自由な方…移動に時間がかかるため、レベル3「高齢者等避難」より前、大雨警報の段階で動き始める。自治体の「避難行動要支援者名簿」や地域の支援者と、日ごろから連絡先を共有しておく。
- 乳幼児…ミルク・液体ミルク・使い捨て哺乳ボトル・おむつ・おしりふき・母子健康手帳を持ち出し袋へ。避難所は感染症のリスクもあるため、安全な親戚宅やホテルを第一候補にするのも手。
- ペット…原則は同行避難(一緒に避難所まで連れて行く)。ただし避難所では飼い主が世話をし、ケージに入れるのが基本。フード数日分・水・食器・トイレ用品・ワクチン証明・写真を用意。ペット可のホテルや親戚宅があれば、そちらのほうがお互い安心です。
参考: 内閣府「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」(PDF)
印刷用チェックリスト:避難先の準備
【今のうちに】
- □ ハザードマップで自宅の浸水深・土砂災害区域を確認した
- □ 「立ち退き避難」か「屋内安全確保」かの見当をつけた
- □ 避難先を2つ以上、危険箇所を通らない経路つきで決めた
- □ 親戚・知人宅に「大雨のときは頼む」と伝えてある
- □ 避難開始のタイミングを家族で共有した(レベル3/レベル4)
- □ 共通の持ち出し袋を玄関にまとめた/モバイルバッテリーを充電した
【半日前予測・警報が出たら】
- □ 車のガソリンを満タンに、車を高台へ移動
- □ ホテルに避難するなら予約
- □ 飲用水・携帯トイレ・明かりを上階へ(在宅避難の場合)
- □ スマホの緊急速報メール・自治体防災アプリをオン
- □ 明るいうちに、雨が本降りになる前に避難を実行
よくある質問
避難所は混んでいて入れないと聞きました。行っても大丈夫ですか?
まず自治体の防災情報やアプリで、開設されている避難所と混雑状況を確認してください。近年は分散避難が進み、あらかじめ「満員なら次はどこへ」を決めておくことがすすめられています。安全な親戚・知人宅やホテルを第一候補にし、避難所は「他に行き場がないときの受け皿」と考えると動きやすくなります。ただし命の危険が迫っているときは、混雑を理由にためらわず、最寄りの安全な場所へ逃げてください。
マンションの高層階に住んでいます。避難所へ行く必要はありますか?
自宅が浸水想定区域の外、または浸水しない階なら、無理に外へ出るより「在宅避難」が安全なことが多いです。ただし停電でエレベーター・給水ポンプ・オートロックが止まると生活が一気に不便になります。水・食料・携帯トイレ・明かりを1週間分をめやすに用意し、1階の駐車場や機械室・電気室が浸水する可能性も想定しておいてください。
ペットがいるので避難所に行きづらいです。
多くの自治体が「同行避難」(避難所まで一緒に連れて行く)を原則としていますが、屋内で人と同じ空間に入れるかは避難所ごとに違います。ケージ・フード・水・トイレ用品・ワクチン証明を用意し、可能なら事前に自治体へ受け入れ方法を確認しておきましょう。ペット可のホテルや、安全な場所の親戚宅を避難先にできれば、その方がお互いに負担が少なくてすみます。
車で避難してもいいですか?
渋滞や立ち往生、冠水路への進入といったリスクがあるため、大雨のときの車避難は慎重に。使うなら「早めに」「冠水しやすい道路・アンダーパスを避けた経路で」「明るいうちに」が条件です。高齢者や体の不自由な家族がいて徒歩が難しい場合は、レベル3の段階で早めに出発してください。避難所に車中泊スペースがあるかも事前に確認を。
「屋内安全確保」でよいと判断する条件は何ですか?
内閣府のガイドラインでは、(1)自宅が家屋の倒壊・流失のおそれがある区域の外、(2)想定される浸水の深さより高い階に留まれる、(3)水・食料などの備えが十分、の3つを満たす場合に、上階などにとどまる「屋内安全確保」が選択肢になるとしています。土砂災害警戒区域内や、地下・半地下に住んでいる場合は当てはまりません。迷ったら「立ち退き避難」を選んでください。
まとめ
- 避難先は指定避難所・親戚知人宅・ホテル・自宅上階の4択。ひとつに絞らず2つ以上決めておく。
- 先にハザードマップで自宅のリスクを知る。倒壊・流失のおそれや浸水深が階数を超えるなら立ち退き避難。
- 行き先には川・用水路・アンダーパスを通らない経路をセットで用意する。
- 移動が危険な状況(冠水・暴風・夜間)では垂直避難に切り替える。ただしこれは次善の策。
- 高齢者・乳幼児・ペットがいる家庭は一段早く動く。安全な親戚宅・ホテルを第一候補にするのも有効。
紘一のひとこと:
東日本大震災のあと、私は「避難所に行くのが避難だ」と思い込んでいました。でも実際に大雨のたびに動いてみると、いちばん心が落ち着くのは、少し離れた高台に住む妹の家に前もって連絡して、明るいうちに家族で移動できたときでした。避難先を人に頼むのは気がひけるものですが、「困ったときはお互いさま」とだけ伝えておく。それだけで、いざというときの選択肢がひとつ増えます。
参考・出典:
内閣府「避難情報に関するガイドライン」
内閣府「避難所の生活環境対策」
内閣府「ホテル・旅館等への避難について」
内閣府「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」(PDF)
国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
気象庁「防災情報(警報・注意報・キキクル)」
最終更新日: 2026年9月7日
※本サイトは、東日本大震災を経験した設定の運営者が独学で集めた防災知識を発信する個人ブログです。医療・法律・行政の専門的判断が必要な場合は必ず専門機関・自治体の情報をご確認ください。避難の要否は、お住まいの自治体が発表する避難情報と現地の状況に従ってご判断ください。
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