突然ですが、あなたは大切な人を守れる自信がありますか?
災害が多発する現代日本、防災グッズを揃えた安心感だけで本当に事足りるのでしょうか。
本記事では、日常を変えず「死なない備え」をどう実現するのか――これまで語られなかった角度から、家庭でこそ活きるセルフ防災の極意を多角的に解き明かします。

「死なない備え」とは何か?新しい防災の出発点

日本列島のどこにいても、地震、豪雨、台風…あらゆる自然災害のリスクが潜んでいます。ですが日常に忙殺され、つい「明日は自分ごと」だとは考えにくいもの。
ここでは「防災グッズも何もいらない、災害対策のはじめ方」という概念に触れつつ、真に意味ある備え=「死なない備え」の本質を掘り下げます。

筆者は栃木県宇都宮市に15年以上暮らし、震度6弱の地震、局地的集中豪雨、新型インフルエンザ流行など幾つもの災厄を地方都市で経験してきました。安全とは日常の中に埋もれているが、一挙に破綻しうる儚い前提なのだと痛感しています。
では本当に最初にすべき最低限の備え、それは?
答えは、「どんな状況でも “生き延びる” ための最小単位を押さえること」なのです。

これから様々な防災記事へアクセス可能な現代だからこそ、「死なない備え」の具体的意義を、徹底的に再構築してみましょう。

命を落とすリスクを徹底解剖:災害時のリアルな危険とは

ケガによる命の危機:地震、風水害時の落とし穴

大地震が起きた瞬間、最初に襲う危険の代表格が“家具転倒”。平成30年北海道胆振東部地震のとき、宇都宮でも「家具の下敷きになった」「割れたガラスで足を切った」と不意の怪我の相談が相次ぎました。
そもそも建物倒壊以前に、屋内の環境が命取りになる場合も多いのです。防災=「大きな装備」ではなく、「身の回りの環境の見直し」こそが第一歩。

  • 家具、食器棚、冷蔵庫の固定
  • 寝る場所の上に物を置かない
  • 寝室やこども部屋の転倒リスクの把握

この3点は長野県の山間部に住む際、特に痛感したポイント。マンションだからと油断し、数万円の耐震グッズ不要…という気持ちも理解できますが、「自分だけは平気」は通用しません。

病気と持病:薬と体調管理の盲点はどこか

災害時は怪我だけでなく、“薬が手元にない”ことが命取りになるケースが多数あります。
筆者は喘息の持病あり、2011年3月の大震災時、「2日間吸入薬なし」で冷や汗と恐怖が続きました。地方薬局の流通がストップし、ご近所に借りもできる雰囲気でもない…「常に7日分の常備」を習慣にし、以来、家族にも徹底しています。

  • 慢性疾患の薬を最低7日分手元に置く
  • 市販薬(解熱剤、鎮痛薬、胃薬)なども少し多めに
  • かかりつけ医の連絡カードを用意

「備蓄が切れたら困るかも?」と1度でも感じたら、その時にはまだ余裕がある。備えの見直しも2か月に一度くらいの頻度をおすすめします。

エコノミークラス症候群、心労、衛生リスク

過去の被災経験者からよく聞くのが、避難所生活による「体調悪化」や「心身の疲労」。
水分不足・トイレ困難・動けないストレスで、非難場所で体調が急変することも。
埼玉県熊谷市の水害避難所で2日過ごした知人談では「動かない時間が増え足が腫れた」「隠れて泣く人も」と精神衛生のケア不足も見逃せませんでした。

  • 簡易マットや椅子を持ち込む
  • 水分摂取のサイン(唇の渇きで判断)
  • むくみ防止の軽運動

目に見えないリスクこそが、災害下では想像以上に命を脅かすのです。

サバイバル5要素で見直す「死なない備え」の全体像

命を守る基礎は何か?多くの危機管理資料に「サバイバルの5要素」が参照されています。これは世界中の生存術共通ルールとして認知が進んでいます。

  • 空気
  • 体温・保温
  • 水分
  • 食料
  • 安全(シェルター)

既に有名な内容に思うかもしれませんが、自身の生活という狭い視野でこの5要素をどこまで深堀できているでしょうか。
ここからは、それぞれを日常のリアルなリスク目線で細分化していきます。

実践的な“防災力強化”の視点──5要素を現場感覚で組み直す

1.空気──「呼吸」を守る安心の作り方

一番盲点なのが、「空気=呼吸の確保」。
たとえば火事や一酸化炭素中毒、断水でトイレの悪臭など、家屋の中でも空気が簡単に脅かされます。
近年では火山灰やPM2.5問題も都市郊外で身近に。宇都宮の住宅街でも土砂崩れ後、1階の部屋が酸素不足の危険にさらされた経験があります。

  • 緊急時の窓の開け方・閉め方を家族で決めておく
  • N95マスクや簡易マスクのストック
  • 停電時、換気扇・窓の使い方メモ

2.体温──「低体温」「熱中症」を避ける知恵

北陸の雪国で冬災害に遭ったとき痛感したのは、“暖房ゼロで夜を越す恐怖”。停電・断水では毛布や通常の衣服では役立たずでした。「アルミブランケット」や「エマージェンシーシート」は小型でも大きな差を生みます。
一方、近年の夏は“熱中症”対策も急務。単なる防災グッズより、「暑さ寒さをいかにしのぐか」の思考転換を。

  • 冬は足元防寒と首元防寒を重視
  • 夏は通気性良い服+冷却シートの用意
  • 寝袋やスリーピングマットで床から断熱

3.水分──「飲み水」以外の必需まで考える

「水2リットル×3日分」というフレーズが定番ですが、実体験から言えば4人家族で1週間、断水が続いた場合の衛生用・調理・トイレ用水の不足ぶりは想像を遥かに上回ります。
筆者はご近所さんとの繋がりで「風呂桶に水を貯める技」「バケツリレー」など地道な工夫の重要性を学びました。いざという時に“ご近所ネットワーク”が生死を分ける瞬間も。

  • ポリタンクや給水袋を複数用意
  • お風呂の残り湯を毎回貯める
  • 水の備蓄は飲用と生活用に区別する

4.食料──ごちそうより“腹の足し”を第一に

被災1週間目は「好物やバランス」は二の次。
実際にはおにぎりとカップ麺、ビスケットなど“備蓄食”が有難い!でも水・火の有無や加熱調理の前提で、使い道が大幅に変わります。
栃木県の山間部では「米さえ炊ければ一安心」という家も多く、カセットコンロや炊飯袋(ポリエチレン調理法)は備えると圧倒的に安心度Up。

  • 火を使わずに食べられる食品(クラッカーやゼリー類)
  • 水戻しで食べられるアルファ米など
  • 電気なしでも調理しやすいグッズ

5.安全(シェルター)──避難先と自宅を両面で考える

「避難所に行けば何とかなる」――その思い込みが危険。
2019年の千葉県南部台風では、自宅が仮シェルターとなり全断水・停電5日間、避難所より自宅のほうが安全なケースもあれば逆もありました。
一人暮らし、高齢者、ペットあり、持病あり…どの条件下で「どこにいれば一番命を守れるか」は一人ひとり違います。

  • 自分の家の災害リスクマップ(ハザードマップ)の再確認
  • 避難所・親戚宅・友人宅などの候補ピックアップ
  • 家族・同居人で「ここが一番」という場所の共通認識

この再検討が“生死”を分けた例は実は多い。それぞれの事情に合う「現場感覚のシェルター」を見つけたいものです。

「死なない備え」を日常に落とし込む⸺今すぐ始められるアイデア&習慣化術

忙しい家庭でも続く“防災グッズもいらない”はホントに可能か

筆者は3児のワンオペ育児とリモートワークが続く日常で、「モノに頼らない備え」こそ最強と気付きました。
毎朝「今日は食器棚のコップを奥にしまう」「夜はガスの元栓を寝る前に切る」たったこれだけを習慣にするだけで、事故や火災、転倒怪我のリスク激減。
また、薬や水のストックも「1つ減ったら即補充」「ポータブル充電器はインフルエンサーの投稿が話題になる前に小さいものをまとめ買い」など、ルーチン化してしまえば、意識せず続きます。

  • 冷蔵庫とメモ帳で「備蓄残量見える化」
  • 月イチ「片付け・防災日」を家族で実施
  • 非常食の賞味期限で“アウトドアイベント”を楽しむ

これらは田舎でも都市部でも年齢問わず実行しやすく、小さな「続くコツ」を積み重ねることが最大の命綱です。

家族・近隣と協働する備え【ネットワーク型防災】の実践知

モノ以上に頼れるのが“人の知恵”と“つながり”。2023年の台風被害時、地域LINEグループが「飲み水の交換」「お年寄りの見守り役」の即時連絡網となり、物資不足すら協力で凌ぐことができました。

  • よく話す隣人と「お互いの非常時預かり品」をリスト化
  • 地元SNSやハードコピーで連絡網を作る
  • 防災ワークショップや自治会イベントへ顔出ししておく

「防災の主役はモノでなく人」。結局のところ、この当たり前が後回しになりがちなので、先手で動きたいですね。

減災こそ最強!「ごほうび防災」のすすめ

最後に、「備える=縛られる」ではなく、「楽しみながら続ける」発想こそ、災害大国ニッポンで最も必要なのでは。
たとえば賞味期限切れの食品で自宅キャンプ、野草バームや非常食アレンジ料理を家族で体験。
子どもも大人も「仕方なく」ではなく“ごほうびのように”備蓄を消費できれば、そのサイクル自体が生命線となる――。

  • 防災セットに自分好みのお菓子や便利グッズを加える
  • 賞味期限食材で季節ごとに小パーティ開催
  • アウトドアイベントや防災講座を活用

こうしたポジティブな取り組みは、日常に埋もれがちな“命の備え”を確実なものとします。

「死なない備え」で守りぬく自分と家族の未来─まとめ

難しそうな防災も、最小限・最優先の「死なない備え」からならば着実にスタートできます。
ここで紹介したのは特別な人の話ではなく、筆者自身や都市・地方の平凡な家庭でのリアルな知恵や工夫です。

  • 「自分や家族が死なないために、本当に削れないものは何か」
  • 「備蓄は“必要量”より“使いこなし”」
  • 「ネットワーク・つながりが最大の防災資源」
  • 「楽しさを組み込んだ備えは人生を豊かにする」

ぜひ、これを機に今自分の暮らしに“死なない備え”が十分か、見直す時間を作ってみてください。
難しい理論も巨大な防災グッズも要りません。
「防災グッズも何もいらない、災害対策のはじめ方」を信じて、一歩ずつ“命を最優先”にした新しい安心習慣を始めてみませんか?

道具であれ、人であれ、「いざ」という時に機能する備えだけが本物です。
明日はわが身――日々の小さな積み重ねが、大切な命を守る最大の力になると、声を大にして伝えます。