この記事でわかること
・「激甚災害」とはどんな制度で、何のために指定されるのか
・「本激」と「局激」の違い、指定されるまでの流れと期間
・指定されると具体的にどんな支援措置が受けられるのか
・よく同時に報じられる「特定非常災害」との違い
・令和8年熊本地震で、2026年8月7日に実際に決まったこと
激甚災害とは何か
「激甚災害」は、地震や台風、豪雨などによって国民経済に著しい影響を及ぼすような大きな被害が出た際に、国が指定する制度です。1962年(昭和37年)に創設された「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(激甚災害法)に基づいており、道路や河川などの公共土木施設、農地・農業用施設の復旧事業について、国が自治体に出す補助金の割合(国庫補助率)を通常より引き上げることで、自治体の財政負担を軽くすることを主な目的としています。
つまり激甚災害の指定は、被災者に直接お金が配られる制度というよりも、自治体や中小企業などの「復旧費用の負担」を国が支援する仕組みだとイメージするとわかりやすいです。
「本激」と「局激」の違い
激甚災害の指定には、大きく分けて2種類あります。
- 本激(激甚災害): 全国規模で「激甚災害指定基準」を上回る被害が出た場合に指定。対象区域を限定せず、対象となる災害と適用措置を指定する
- 局激(局地激甚災害): 本激の基準には届かないものの、特定の市町村単位で大きな被害が出た場合に指定。対象となる市町村名も明示される
内閣府のQ&Aによれば、本激・局激どちらで指定されても適用される支援措置の内容自体に違いはなく、同じ災害について二重にかさ上げされることもないとされています。今回の令和8年熊本地震は、地域を限定しない「本激」として指定されました。
問1 本激と局激の違いを教えてください。本激の方が、補助率が高いのでしょうか。
参考: 内閣府「激甚災害制度Q&A」
指定されると何が変わる?主な支援措置
激甚災害に指定されると、法律で定められたさまざまな特例措置のうち、被害の実態に応じたものが適用されます。代表的なものは次のとおりです。
- 公共土木施設等の災害復旧事業: 道路・河川・港湾などの復旧事業について、自治体の財政力に応じて国庫負担率が段階的にかさ上げされる
- 農地・農業用施設等の災害復旧事業: 通常83.5%程度の補助率が、被害の大きさに応じて最大95%超までかさ上げされる
- 中小企業への支援: 中小企業信用保険の保険限度額が別枠で追加され、てん補率が70%から80%に引き上げられるなど、事業再建のための資金を借りやすくする措置
- 公営住宅の建設: 滅失した住宅の一定割合を対象に、国庫補助率が2/3から3/4に引き上げられる
- 天災融資制度・小災害債: 農林漁業者向け融資の限度額引き上げや、小規模な災害復旧費に充てる地方債の元利償還金を、国の地方交付税算定に手厚く算入する措置
これらは主に自治体・農業者・中小企業向けの制度で、個人の被災者に自動的に現金が振り込まれるものではありません。ご自身が使える支援の詳細は、お住まいの自治体の窓口や、罹災証明書の手続きとあわせて確認することをおすすめします。
参考: 内閣府「激甚災害制度Q&A」
指定までの流れと期間の目安
本激の指定は、被災自治体からの被害報告をもとに内閣府が気象庁等と協議し、指定基準に照らして判断したうえで、中央防災会議への諮問・閣議決定を経て行われます。目安として発災から1〜2か月程度とされていますが、被害が甚大で査定が早く進む場合は、より早期に指定されることもあります。
参考までに、2016年(平成28年)の熊本地震では、4月14日の発災から4月25〜26日の指定まで約11〜12日間というスピード指定でした。今回の令和8年熊本地震も、7月28日の発災から2026年8月7日の閣議決定まで約10日間と、比較的早いペースで指定に至っています。
参考:
内閣府(防災担当)「平成28年熊本地震に係る激甚災害指定」
首相官邸「令和8年8月7日(金)持ち回り閣議案件」
あわせて報じられる「特定非常災害」との違い
今回の熊本地震では、激甚災害の指定と同時に「特定非常災害」の指定も閣議決定されました。名前が似ていて紛らわしいのですが、根拠となる法律も目的も異なる別の制度です。
- 激甚災害: 「激甚災害法」に基づき、自治体・農業者・中小企業などの復旧費用を国が財政面で支援する制度(お金の支援)
- 特定非常災害: 「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づき、運転免許証の有効期間延長、相続放棄の判断期間延長など、被災者本人の行政手続き上の期限を猶予する制度(手続きの支援)
死者・行方不明者・避難者が多数に上ること、住宅被害が広範囲に及んでいること、交通・ライフラインの途絶が広範囲であることなどを踏まえて、両方の制度がセットで指定されるケースは珍しくありません。今回の熊本地震も、この2つが同時に決定される形となりました。
参考: NHKニュース「熊本地震の被害を「激甚災害」に指定 自治体の復旧費用支援へ」(2026年8月7日14時47分更新)
令和8年熊本地震での決定内容(2026年8月7日時点)
政府は2026年8月7日、持ち回り閣議で令和8年熊本地震を「本激」の激甚災害に指定する政令と、特定非常災害に指定する政令をあわせて決定しました。これにより、農地・用水路・道路・港湾・上下水道などの災害復旧事業で国庫補助率が引き上げられるほか、被災した中小企業が事業再建のための資金を借り入れる際の融資保証も手厚くなる見通しです。特定非常災害の指定にともない、運転免許証の有効期間延長など、被災者向けの行政手続きの特例も適用されます。
対象となる具体的な措置の内容は、今後、内閣府や関係省庁から順次案内される見通しです。最新の適用状況は、当サイトの熊本地震まとめページでも随時お伝えしていきます。
👉 【随時更新】令和8年熊本地震 最新情報まとめ(被害状況・避難所・給水情報)
紘一のひとこと:
「激甚災害」「特定非常災害」という言葉は、ニュースで聞いても正直ピンとこない方が多いと思います。私自身、東日本大震災のときは、目の前の生活を立て直すのに精一杯で、こうした制度の仕組みを理解する余裕はありませんでした。ただ、後になって「あのとき使える支援を知らずに諦めてしまったこと」に気づくのは、とてもつらいことです。今つらい思いをされている方には、まずご自身の安全と生活の確保を最優先にしていただきたいですが、少し落ち着いたタイミングで、こうした制度があることだけでも頭の片隅に置いていただければと思います。
参考・出典一覧
- 内閣府「激甚災害からの復旧・復興対策」
- 内閣府「激甚災害制度Q&A」
- 内閣府(防災担当)「平成28年熊本地震に係る激甚災害指定」
- 首相官邸「令和8年8月7日(金)持ち回り閣議案件」
- NHKニュース「熊本地震の被害を「激甚災害」に指定 自治体の復旧費用支援へ」(2026年8月7日14時47分更新)
最終更新日: 2026年8月7日
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