先日、テレビ朝日「報道ステーション」が「発電機で対応も…病院が”機能停止” 千葉豪雨”地下浸水”の危険性」という特集を放送していました(2026年8月18日放送)。停電で非常用発電機を動かしても、その発電機自体が地下で水につかってしまえば意味がない――そんな、かなり衝撃的な内容でした。
正直に言うと、私はこれまで「病院が丸ごと機能を失う」という事態を、そこまでリアルに想像できていませんでした。でも今、熊本地震と千葉豪雨という2つの大きな災害が同時進行している中で、実際にそれが起きています。
持病があって薬を毎日飲んでいる方、透析や在宅酸素など、病院とのつながりが命綱になっている方にとって、これは他人事ではありません。今回は、「かかりつけの病院や薬局が使えなくなったとき、どう動けばいいか」を、一次情報にできる限りあたって整理してみます。
🔴 今、実際に何が起きているのか(千葉豪雨の医療機関被害)
まず、他人事ではないという実感を持っていただくために、2026年8月13日からの千葉豪雨で実際に医療機関に何が起きたのかを、報道ベースで時系列に整理します。
- 千葉市内の総合病院: 豪雨の影響で地下にあった電気設備と非常用電源が水没して停電。8月14日から全診療科を休診しており、8月17日時点でも「再開のめどは立っていない」状態が続いています。
- 千葉大学医学部附属病院: 地下の排水処理設備が冠水・故障し、手術器具の洗浄・滅菌ができなくなったため、8月19日に予定していた手術をすべて中止。18日も件数を制限して実施し、20日以降も近隣医療機関への洗浄委託などで対応しつつ、しばらく件数制限が続く見込みです。
- セントマーガレット病院(八千代市): 8月13日の大雨で地下1階が浸水し、サーバーがダウンして電子カルテが一時使えなくなり、薬の調剤も手作業での仕分けに切り替えて対応したと報じられています。
厚生労働省のとりまとめでも、千葉県内で最大25の医療施設が浸水などの被害を受け、5つの薬局が被害を受けてそのうち2軒が営業できない状態になったことが報告されています。
豪雨の影響で、地下の電気設備と非常用電源が水没して使えなくなり、停電が続いている(千葉市内の総合病院、8月14日から全診療科休診)
参考: NHKニュース「千葉の総合病院 豪雨で停電続き診療休止 再開のめど立たず」(2026年8月17日16時26分配信)
FNNプライムオンライン「千葉豪雨で千葉大病院は手術中止 排水処理設備の故障で滅菌できず」(2026年8月)
💡 なぜ病院は水害に弱いのか
「病院なら非常用発電機があるから大丈夫」と思いがちですが、その発電機や配電盤自体が地下に設置されているケースが多いというのが、今回の一連の報道で見えてきた弱点です。
これは今回に限った話ではなく、2019年の令和元年東日本台風(台風19号)でも、建物の地下にあった高圧受変電設備が浸水して停電し、エレベーターや給水設備などのライフラインが一定期間使えなくなった事例が報告されています。これを受けて、国土交通省と経済産業省は「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」(2020年6月策定)をまとめ、医療施設を含む建物の電気設備の浸水対策強化を呼びかけています。
参考: 国土交通省・経済産業省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」(令和2年6月)
つまり、「大きい病院だから安心」とは言い切れないのが実情です。だからこそ、私たち患者・家族の側でも備えておく必要があります。
💊 【薬編】持病の薬が切れそうなときにできること

1. お薬手帳を”命綱”として持ち歩く
災害時、かかりつけの薬局や病院に連絡が取れない状況でも、お薬手帳があれば、別の薬局・病院でも今飲んでいる薬の内容をすぐに伝えられます。高血圧・糖尿病・腎臓病など、継続的な服薬が必要な方は特に、常に携帯することをおすすめします。
紙のお薬手帳を避難時に持ち出せなかった場合に備えて、スマホで表紙と最新ページを撮影しておく、あるいは電子版お薬手帳アプリを使っておくのも有効です。停電でスマホの充電が切れる可能性も考えると、写真と紙の両方があると安心です。
2. 予備の薬、どれくらい備蓄すべき?
目安として、日本医師会など複数の医療系情報がおおむね次のように示しています。
- 一般的な持病の薬: 最低3日分、できれば1週間分を、いつでも持ち出せる場所に予備として保管
- 1型糖尿病のインスリンなど、命に直結する薬: 2週間分程度を目安に
家族にも保管場所を伝えておくと、自分が動けない状況でも誰かが持ち出せます。
3. 処方箋がなくても薬をもらえる仕組みがある
「病院に行けない=薬がもらえない」ではありません。大規模災害では、厚生労働省が処方箋なしでの保険調剤を認める特例を発出することがあります。
今回の令和8年熊本地震では、厚生労働省が2026年7月29日付の事務連絡で、交通の遮断などでやむを得ず医師の診療を受けられない場合、お薬手帳や電話でのやり取りなどで服薬内容が確認できれば、事後の処方箋発行を条件に保険調剤として扱ってよいという取り扱いを示しました(東日本大震災や能登半島地震でも同様の特例が使われた実績があります)。
被災した患者が処方箋を持参せずに調剤を求めてきた場合、客観的にやむを得ない理由で医師の診療を受けられないと認められ、かつ医師からの処方内容が電話やメモ等で確認できる場合には、保険調剤として取り扱って差し支えない
参考: 日経メディカル「熊本地震、『薬がない患者』が最大の課題、処方箋なし調剤の特例で対応」
千葉豪雨についても、厚労省は2026年8月14日付で、マイナ保険証や資格確認書がなくても氏名・生年月日等の申告で受診できる特例や、保険診療・診療報酬に関する複数の特例を発出しています。調剤に関する具体的な取り扱いは被災状況によって変わるため、迷ったら「今行ける薬局」に相談してみてください。お薬手帳さえあれば、かかりつけ以外の薬局でも対応してもらえる可能性が高いです。
参考: 全国保険医団体連合会「【千葉豪雨・令和8年8月13日】資格確認書やマイナ保険証がなくても受診可能 厚労省が事務通知」(2026年8月14日)
🏥 【病院編】かかりつけ病院が機能を失ったときの行動
1. 「かかりつけ以外」の医療機関を、平時から2〜3か所把握しておく
いざというとき、かかりつけ病院がストップしていても慌てないために、自宅や職場の近くで、同じ診療科を持つ別の病院を2〜3か所リストアップしておくことをおすすめします。休日夜間の急患については、地域の急患センターや救急相談ダイヤル「#7119」(実施エリアが限られるため事前に自地域の対応可否を確認)も選択肢になります。
2. 救急隊や行政は「EMIS」という仕組みで受け入れ先を探している
一般の方が直接操作するものではありませんが、知っておくと安心できる仕組みとしてEMIS(広域災害救急医療情報システム)があります。厚生労働省が主導する全国共通のシステムで、各医療機関が自らの被災状況や患者の受け入れ可否をリアルタイムで登録し、救急隊や行政が受け入れ先の調整に活用しています。
つまり、「かかりつけ病院がダメでも、別の病院につなげる仕組みが裏側で動いている」ということです。119番通報時や避難所の医療救護班に相談する際は、遠慮なく「持病があって薬が必要」と伝えてください。
参考: トヨクモ防災タイムズ「EMIS(広域災害救急医療情報システム)とは?役割と運用の流れを解説」
3. かかりつけ病院・自宅の浸水リスクを事前に確認しておく
お住まいの地域やかかりつけ病院が、そもそも浸水想定区域に入っていないか、国土交通省のハザードマップポータルサイトで一度確認しておくと、「この病院は大雨のときは要注意かもしれない」という心構えができます。
⚠️ 特に命に直結する持病がある方へ
人工透析を受けている方
透析は数日休むだけでも命に関わるため、災害への備えが特に重要とされる医療のひとつです。公益社団法人 日本透析医会は「災害時情報ネットワーク」を運営しており、震度6弱以上の地震や、災害救助法が適用されるような大規模な水害などが起きた際に稼働し、被災地の透析施設の稼働状況や受け入れ可否の情報を、医療関係者間で共有する仕組みになっています。かかりつけの透析施設と、「もしここが使えなくなったら、どこに移るか」を事前に相談しておくと安心です。
在宅酸素療法・人工呼吸器を使っている方
酸素濃縮器や在宅人工呼吸器は電気で動くため、停電がそのまま命に関わるリスクになります。一般的な備えとして紹介されているのは次のような内容です。
- 停電時はすぐに酸素ボンベへ切り替えられるよう、ボンベの残量・接続方法を日頃から確認しておく
- 人工呼吸器の内部バッテリーを常に満充電にしておく(多くの機種は電圧低下時に自動でバッテリー駆動へ切り替わります)
- 予備バッテリー・発電機・懐中電灯なども準備しておく
- 電力会社の「災害時要配慮者」制度など、停電時の優先復旧・情報提供の登録がないか、契約している電力会社・機器業者に確認しておく
具体的な機種ごとの対応は、必ず主治医・訪問看護師・機器レンタル業者に事前に確認してください(この記事では一般的な備えの紹介にとどめます)。
📝 まとめ:今日からできる3つの備え
- お薬手帳を常に携帯する(スマホ写真も保険として撮っておく)
- 予備の薬を最低3日分、できれば1週間分(命に関わる薬は2週間分)、持ち出せる場所に保管する
- かかりつけ以外の医療機関・薬局を2〜3か所、平時から把握しておく
「病院に行けば何とかなる」という前提が崩れることがある――今回の千葉豪雨の報道は、そのことを教えてくれました。持病がある方、ご家族に持病がある方は、ぜひこの機会に一度、お薬手帳の中身と、予備の薬の量を確認してみてください。
🧑 紘一のひとこと
私自身、東日本大震災のときは持病がなかったので、正直「薬」のことまで考えが及びませんでした。でも今回いろいろ調べてみて、「お薬手帳1冊が命を守る道具になる」ということを実感しました。防災グッズを揃えるのと同じくらい、お薬手帳のケアも大切にしていきたいですね。
本サイトは、東日本大震災を経験した設定の運営者が独学で集めた防災知識を発信する個人ブログです。医療・法律・行政の専門的判断が必要な場合は必ず専門機関・自治体の情報をご確認ください。専門家の見解を引用する際は必ず出典を明記しています。特にこの記事は健康・医療に関わる内容のため、実際の服薬・受診の判断は必ず主治医・薬剤師・医療機関にご相談ください。
参考・出典一覧
- テレビ朝日「報道ステーション」YouTube公式チャンネル「発電機で対応も…病院が『機能停止』千葉豪雨『地下浸水』の危険性」(2026年8月18日)
- NHKニュース「千葉の総合病院 豪雨で停電続き診療休止 再開のめど立たず」(2026年8月17日16時26分配信)
- FNNプライムオンライン「千葉豪雨で千葉大病院は手術中止 排水処理設備の故障で滅菌できず」
- 国土交通省・経済産業省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」(令和2年6月)
- 日経メディカル「熊本地震、『薬がない患者』が最大の課題、処方箋なし調剤の特例で対応」
- 全国保険医団体連合会「【千葉豪雨・令和8年8月13日】資格確認書やマイナ保険証がなくても受診可能 厚労省が事務通知」(2026年8月14日)
- トヨクモ防災タイムズ「EMIS(広域災害救急医療情報システム)とは?役割と運用の流れを解説」
- 日本透析医会 災害時情報ネットワーク
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