
はじめに:在宅避難が注目される理由
近年の自然災害の激甚化に伴い、「在宅避難」という言葉を耳にする機会が増えてきました。実際に、避難とは「難」を「避ける」ことであり、避難所へ行くことだけが避難ではありません。そして東日本大震災では、広範囲に大地震が起きると、避難所に入りたくても入れない人が大勢出てくることが初めて分かった災害でしたという現実もあります。
特に都市部では、建物の倒壊や火災で自宅を失った人は避難所に入るかと思いますが、建物自体に被害がない人は入れない可能性があるので在宅避難の備えを日頃からしてほしいという状況があることから、在宅避難への注目が高まっています。
家族の安全を守りたいと考える主婦の皆さんにとって、在宅避難の準備は決して他人事ではありません。この記事では、実際の被災体験談をもとに、本当に必要な防災グッズと効果的な備蓄方法について詳しく解説します。
在宅避難とは?基本的な考え方と判断基準
在宅避難の定義
在宅避難とは、地震などの災害が起きたときに、今いる場所に火災や爆発、建物の倒壊等の危険がなく、自宅で身の安全が確保され、引き続き住める場合に、自宅で避難生活を送ることです。
在宅避難を選択すべき状況
総務省では、「在宅避難」を推奨している自治体の例を以下の通りいくつか示しています:
– 自宅が無事な者は避難所への避難を控え、自宅で避難生活を送ることを原則とする
– 自宅に被害がない又は軽微な被害で、安全性や機能面で問題がない世帯はできるだけ在宅生活とする
– 自宅の倒壊や火災により寝泊まりするところが無くなった方以外は、可能な限り在宅避難をする
在宅避難の判断フローチャート
在宅避難が可能か否かの判定基準は、地震時も風水害時も同じです。自宅の家屋に倒壊などの被害があるか、自宅が水害や土砂災害の被害を受け、生活できないか、日常生活をするうえで他人のサポートが必要であるかなどを確認し、これらに該当しなければ在宅避難が可能です。
在宅避難のメリット・デメリット
メリット
在宅避難では、プライバシーが保護されているため心理的安全性を確保でき、生活空間が普段と変わらないためストレスを感じにくく、生活環境をコントロールしやすいメリットがあります。
住み慣れた環境で安心できる、食事も含め普段の生活リズムに近い生活ができます。プライバシーも守られるので、ストレスも少なくなります。また、感染症や移動によるリスクの低減として、避難所での混雑を避けることで、感染症のリスクも少なくなります。
デメリット
デメリットとしては、停電や断水が起きた場合にライフラインを確保できない点が挙げられます。また、生活物資・支援物資は避難所で配布されることが一般的であるため、物資が不足するリスクもあります。
実際に役立った防災グッズ30選
災害を経験した方々の体験談から、本当に役立った防災グッズを厳選してご紹介します。
食料・飲料関連(必需品)
#### 1. 飲料水
1日に必要な飲料水の量の目安は成人で約3リットルであるため、自宅には1人あたり「3リットル×3日分」の飲料水(保存水)をストックしておきましょう。実際には、最低7日分以上の水・食料・携帯トイレ等を家族の分を含めて準備しましょうという準備が推奨されています。
#### 2. 非常食(アルファ化米・レトルト食品)
食料(アルファ化米、サバ缶、レトルトカレー等)3食×7日分を準備することが重要です。普段から食べ慣れているものを多めに備蓄する「ローリングストック法」が効果的です。
#### 3. 野菜ジュース
被災時はどうしても野菜不足になりがちだったが、なんの手間もなく美味しく栄養&水分補給できる野菜ジュースには本当に助けられたという体験談があります。
#### 4. スキムミルク
牛乳は栄養満点だが冷蔵設備が使えないとすぐ傷んでしまう。スキムミルクは常温で長期保存できるのでとても便利であるとの体験談があります。
#### 5. 焼海苔・乾燥わかめ
常温長期保存可能で栄養価が高いので超オススメである。カップ麺やインスタント味噌汁に入れたり、そのまま食べたりしていたという実用的な使い方があります。
調理・熱源関連
#### 6. カセットコンロ・ボンベ
カセットコンロとボンベのセットは、災害時には大活躍します。鍋やフライパンを使って食事を温めたり調理したりといった使い方が可能です。在宅避難の場合でも、停電で暗い中での調理に大活躍したという声がありました。
#### 7. 電気ポット
避難が長期化したときのため、避難所で自由に電気が使えるなら、電気ポットもあり。カップ麺だけでなくスープなども食べられます。
照明関連
#### 8. 懐中電灯・LEDランタン
懐中電灯は、停電時に足元を照らすために役立ちます。停電が起きると夜間は家の中も外も真っ暗になってしまい、まともに活動するのが困難になってしまうため必須です。
#### 9. ヘッドライト
ヘッドライトといえば、頭に直接ゴムバンドなどで着けるタイプがありますが、こちらは女性は使用時に注意が必要です。帽子などにクリップで取り付けられるタイプもあります。
衛生・トイレ関連
#### 10. 携帯トイレ
大規模な災害では、断水や排水管の損傷などの影響で、自宅のトイレが使えなくなる可能性があります。成人の1日あたりのトイレ使用回数は5回と言われているため、家族1人につき1週間分である35個の備蓄が目標です。
#### 11. ウェットティッシュ・除菌シート
断水時の清拭や手指の衛生管理に欠かせません。
#### 12. 生理用品・おむつ
女性にとって生理用品は必需品。小さなお子様がいる家庭ではおむつも重要です。
情報収集・通信関連
#### 13. 手回し充電ラジオ
緊急時は、情報が一番大切だと実感。それからはラジオをよく聴きましたという体験談があります。
#### 14. モバイルバッテリー
スマホで情報を得るために、モバイルバッテリーも必須です。
#### 15. ポータブル電源
防災グッズで実際に一番役立ったものは「ポータブル電源」です。ポータブル電源があれば、災害時の「電気・家電が使えない」ことによって起きるあらゆる悩みを解決できます。
防寒・寝具関連
#### 16. 毛布・寝袋
在宅避難でとにかく必要だったのは「食料」、そして「寒暖差に対応できるグッズ」でしたという体験談があります。
#### 17. 使い捨てカイロ
冬の災害時には特に重要。暖房が使えない状況での体温保持に役立ちます。
医薬品・救急用品
#### 18. 常備薬
持病がある方は、お薬手帳や普段飲んでいる薬などを手に取れる範囲に置いておくことをおすすめします。
#### 19. 救急セット
絆創膏、包帯、消毒薬、解熱鎮痛剤など基本的な医療用品。
生活必需品
#### 20. ラップ・アルミホイル
食器の汚れ防止や保温に使用。水が貴重な時期の節約にも役立ちます。
#### 21. ゴミ袋・ビニール袋
様々な用途に活用できる万能アイテム。
#### 22. ガムテープ・養生テープ
窓ガラスの飛散防止や応急修理に使用。
#### 23. 軍手・作業手袋
がれきの片付けや作業時の手の保護に必要。
精神的サポート用品
#### 24. お菓子・チョコレート
精神安定用にチョコレートなどのお菓子を持って行った人もいたみたいです。慣れない避難生活で緊張状態が続くので、疲れやすくなります。そんなときの癒しとなるよう、長期保存が可能なお菓子も準備しておくといいかもしれません。
#### 25. 飴・ガム
思うように水分もとれない状況で飴やガムは重宝した。シュガーレスのガムは歯磨き代わりにもなったという体験談があります。
避難所対策用品
#### 26. アイマスク・耳栓
避難所で避難生活をおくるなか、「プライバシーのない生活がストレスだった」という経験談が多くあります。アイマスクや耳栓などの安眠グッズが役立ったというエピソードもあります。
#### 27. 帽子
他人の視線が気になるときにつばのある帽子が役立ったという声があります。
その他の役立つアイテム
#### 28. 防水バッグ・ビニール袋
バッグ自体を防水加工のものに、バッグの中身を袋に入れてから入れることで荷物を水害から守れます。
#### 29. 現金(小銭)
停電時はクレジットカードや電子マネーが使えない場合があります。
#### 30. 電池(各種サイズ)
懐中電灯やラジオなど、電池式機器のスペア電池として必須。
効果的な防災グッズの収納方法
基本的な収納の考え方
防災グッズは、備蓄用と持ち出し用それぞれが最適な場所にないと非常時にすぐ取り出せません。
備蓄品の収納場所
備蓄品はパントリーなど食料品や生活用品をストックする場所があれば、まずはそこで管理を。消費期限が分かるよう日付の付箋などを貼り、古い順に普段の生活で消費するローリングストックで備蓄しておきましょう。
重要なポイントとして、災害発生時にパントリーに入れない場合も考え、備蓄品は複数の場所に分散させることも大事。庭の倉庫や車庫など、直射日光が当たらず、温度変化も少ない場所に万一の備蓄品を置けるとベターです。
持ち出し用品の収納場所
持ち出し品としてリュックタイプの防災袋に常備する備品は、家の中からの避難経路となる玄関の近くの物入れに、非常用持ち出し袋はスマートフォンなどと一緒に枕元に置くのが原則です。
ローリングストック法の実践方法
ローリングストック法とは
ローリングストックとは、生活用品を多めに購入しておき、期限の早いものから使用し、減った分を買い足しながら備蓄する方法のことです。
メリット
日常使いと備蓄用を区別しないため、賞味期限切れで捨ててしまうことがほとんどありません。また、普段から口にしているものであれば、非常時であっても食べやすいでしょう。
実践のポイント
ローリングストック法は、食料品だけでなく、生活用品にも有効です。ラップ、ホイル、ビニール袋など日常生活でよく使うものを「買い置き」し、使った分だけ買い足しましょう。
在宅避難成功のための環境づくり
自宅の安全性確保
在宅避難をするためには、自宅が住み続けられる状態であることが重要です。大きな地震の後、電力が復旧した際の起こる通電火災を防ぐための感震ブレーカーの設置や、建物の耐震化、家具の転倒防止などを行い、安全な環境づくりを心がけましょう。
情報収集手段の確保
目黒区からの情報発信には防災無線放送、目黒区ホームページ、X、LINE、Yahoo防災速報アプリ、目黒区防災地図アプリ、防災気象情報メールなどがあります。どの媒体で受け取ることができるか、普段から確認しておきましょう。
在宅避難時の注意点と対策
ライフライン復旧の現実
実際の被災体験では、電気は5日後に復旧、復旧しても余震のたびに停電してしまったりしていたようで、水道は6日後に復旧したというお話しがあったのですが、復旧してからしばらくは飲めるような水ではなくて、サビが出ていて、完全復旧までには10日ぐらいかかったという状況がありました。
トイレ対策の重要性
快適にトイレが使えないと、排せつを我慢するために食事などを控えることに繋がるなど、心身に悪影響が生じてしまうため、在宅避難に向けてトイレ対策もしっかり準備しておきましょう。
地域とのつながり
在宅避難をした場合でも、足りない物資は自治会・町内会などでまとめて、地域防災拠点に受け取りに行く場合があります。普段から自治会・町内会や地域防災拠点の訓練に参加しておくことも、大切な備えです。
防災グッズの定期点検とメンテナンス
点検タイミング
「防災点検の日」は3月1日・6月1日・9月1日・12月1日となっており、これは1923年9月1日に発生した関東大震災をきっかけに制定されました。この日を目安に定期的な点検を行いましょう。
点検項目
– 食料・飲料水の消費期限確認
– 電池の動作確認
– 医薬品の有効期限確認
– 衣類・寝具の状態確認
まとめ:今日から始める在宅避難対策
在宅避難を成功させるためには、計画的な準備と継続的な見直しが重要です。災害が起きてから防災グッズを買おうとすると、売り切れてしまい供給まで待つ場合があるため事前準備が大切です。
この記事で紹介した30の防災グッズは、実際の被災体験に基づいて厳選したものです。すべてを一度に揃える必要はありませんが、優先順位をつけて段階的に準備を進めていきましょう。
特に重要なのは以下の点です:
1. 最低7日分の水・食料・携帯トイレの確保
2. ローリングストック法による継続的な備蓄管理
3. 自宅の安全性向上(耐震化・家具固定など)
4. 情報収集手段の複数確保
5. 地域との連携体制の構築
家族の安全を守るため、今日から在宅避難の準備を始めませんか?小さな一歩から始めて、災害に負けない強い家庭を築いていきましょう。
防災は「備えあれば憂いなし」。あなたと大切な家族のために、今できることから始めてください。災害が起きてから後悔するのではなく、今この瞬間から行動を起こすことで、安心できる未来を手に入れることができるのです。