家族の命を守るための火災対策完全ガイド!3つの基本と効果的な初期消火・避難方法

住宅火災の現実と今すぐ始めるべき対策

こんにちは。毎日の家事や育児で忙しい中、「もしも家で火事が起きたらどうしよう」と不安に思ったことはありませんか?

住宅火災によって、毎年約900人のかたが亡くなっています。その半数が「逃げ遅れ」によるものです。また、亡くなったかたの約75%を65歳以上の高齢者が占めています。住宅火災によって亡くなったかたは平成17年(2005年)に1,220人を記録して以降、減少傾向にありましたが、令和3年(2021年)からは、増加が続いており、令和5年(2023年)は1,000人を超えるかたが亡くなっていますという現実があります。

令和5年(2023年)に起きた住宅火災(住宅で起きた火災)の件数は1万2,112件で、亡くなったかたは1,023人です(放火自殺者等を除く。)。そのうち約75%にあたる762人が65歳以上の高齢者です。

しかし、適切な知識と準備があれば、火災から家族を守ることができます。今回は、忙しい主婦の皆さんが簡単に実践できる火災対策の方法から、緊急時の初期消火・避難方法まで、詳しくお伝えします。

住宅火災の主な原因とその対策方法

最も多い火災原因トップ4とその対策

住宅火災の死者数を発火源別にみると、「たばこ」「ストーブ」「電気器具」「こんろ」が主な原因となっています。それぞれの具体的な対策を見ていきましょう。

#### 1. たばこ火災を防ぐための対策

寝たばこの危険性と対策

寝たばこは絶対にしない、させないことが最も重要です。

具体的な対策:

– 寝室での喫煙は絶対に避ける

– 灰皿に水を入れて完全に消火する

– 吸い殻は他の燃えやすいものと分けて処理する

– 家族に喫煙者がいる場合は、安全な喫煙ルールを決める

#### 2. ストーブ火災を防ぐための対策

周辺の燃えやすいものの管理

ストーブの周りに燃えやすいものを置かないことが基本です。

具体的な対策:

– ストーブから1メートル以内に洗濯物や布製品を置かない

– 可燃物との距離を常に意識する

– 転倒時自動消火機能付きのストーブを選ぶ

– 就寝時や外出時は必ず消火する

#### 3. 電気器具火災を防ぐための対策

コンセント周りの清掃と管理

「電気器具」では、コンセントに溜まったほこりや、たこ足配線などが原因で出火し、近くに置かれた布製品などに移って燃え広がることによって起こっています。コンセントはほこりを清掃し、不必要なプラグは抜く。

具体的な対策:

– 月1回はコンセント周りを清掃する

– たこ足配線は避け、必要な分だけプラグを使う

– 古い電化製品は定期的に点検する

– 長期間使わない電化製品はプラグを抜く

#### 4. こんろ火災を防ぐための対策

調理時の基本的な注意点

こんろを使うときは火のそばを離れないことが重要です。

具体的な対策:

– 調理中は必ずキッチンにいる

– 電話や来客時は一度火を止める

– 油の温度管理を徹底する

– 安全装置付きのこんろを使用する

初期消火の基本と効果的な方法

初期消火が可能な条件と限界

初期消火とは、火災発生直後の最初の数分以内に行われる消火活動のことです。一般的には火災発生後3分以内に初期消火ができないと壁や天井に火が燃え広がり、市民や自衛消防隊による消火が難しくなると言われています。

一般に初期消火が可能なのは、天井に火がまわるまでと言われています。天井に火が燃え移ったら速やかに逃げて下さい。

消火器の選び方と使い方

#### 家庭用消火器の種類と特徴

ご家庭で消火器を備える場合は、一般家庭で起こりえる火災の多くに対応できるABC粉末消火器が適切です。

主な消火器の種類:

ABC粉末消火器:普通火災、油火災、電気火災すべてに対応

強化液消火器:特に天ぷら油や繊維類による火災に効果的なため、家庭用として最適な消火器といえるでしょう

#### 消火器の正しい使用方法

消火器の使い方 1.消火器を障害物にぶつけたりしないよう注意しながら、火災の起きている場所近くの消火に安全な場所まで運びます。概ね7~8m手前を目安とします。2.黄色の安全ピンを引き抜きます。3.ホースを外し、ホースの先端を持って火元に向けます。4.レバーを強く握って放射します。5.火の根をねらい、手前からほうきで掃くように薬剤を放射します。

消火器使用時の重要なポイント:

1. 適切な距離の確保:火元から2メートル前後離れたところから放射し、鍋の中に消火剤が入るように操作しましょう

2. 放射時間の把握:放射時間は、消火器の種類や薬剤の量により異なりますが、粉末消火器で15秒程度、強化液消火器で30~70秒程度です

3. 逃げ道の確保:室内で放射する場合は、出入り口を背にして逃げ道を確保します

火元別の初期消火方法

#### 天ぷら油火災の場合

揚げ物の油が発火したとき、安全な初期消火のポイントは、水は厳禁で消火器の使用が基本となります。火が燃えている油に水をかけると、水が瞬間的に蒸発して油を周囲に飛び散らせ、炎が周囲に大きく燃え上がるので大変危険です。

天ぷら油火災の対処法:

1. 消火器や消火スプレーによる消火

2. 鍋の蓋を使って酸素を遮断

3. 濡れたバスタオルで覆う(火が小さい場合のみ)

#### 電気火災の場合

電気火災では、通電している可能性があるため、まず電源を切ることが重要です。その後、ABC粉末消火器や二酸化炭素消火器を使用します。

#### 繊維類火災の場合

たとえば布団などをタバコの火の不始末で焦がしてしまい、消火器で消し止めたような場合、表面上は火が消えたように見えても、火種が内部に残っている場合があります。完全に消火できたか確認することが重要です。

命を守る避難方法と煙対策

煙の危険性と避難の基本原則

火災で命を落とす二大原因は「一酸化炭素中毒」と「やけど」です。火災で発生する煙には有毒な一酸化炭素が含まれています。一酸化炭素を吸い込むと、意識がもうろうとし、やがて呼吸ができなくなるなどして、死に至る危険があります。

煙の上昇速度は毎秒3m~5mにもなります。階段で人が上の階に上がる速さは元気な人で、約毎秒0.5mと言われています。それに比べると6倍以上ですので、上に逃げるのは危険です。

正しい避難方法

#### 避難時の基本姿勢

煙は天井から溜まっていく性質を持つため、低い姿勢で床近くの空気を吸いながら這うように逃げます。その際は、口と鼻をタオルやハンカチで覆いましょう。

避難時の具体的な行動:

1. 姿勢を低くして煙を避ける

2. 口と鼻をタオルやハンカチで覆う

3. 壁を伝って出口を探す

4. 扉を開ける前に熱さをチェック

5. 避難経路を確保しながら進む

#### 避難時の服装と持ち物

服装や持ち物にこだわらず、姿勢を低くし、ハンカチで口と鼻を覆うことが重要です。

避難時の注意点:

– 貴重品の持ち出しにこだわらない

– 動きやすい服装を心がける

– 素足で逃げないよう靴を履く

– エレベーターは絶対に使用しない

火災発生時の行動順序

初期消火を行うときの流れは、「火事を知らせる」「消火活動を行う」「現場から離れる」といった順番になります。

具体的な行動順序:

1. 大声で知らせる:「火事だ〜〜〜!!」と叫ぶ。大きな声を出すことにより、度胸が据わり、次の行動が落ち着いて出来ます

2. 119番通報:消防署への通報を最優先

3. 初期消火:安全な範囲で消火活動を行う

4. 避難:初期消火が困難な場合は速やかに避難

日常的な火災対策と予防方法

住宅用火災警報器の重要性

火災で亡くなる原因で最も多い「逃げ遅れ」を防ぎ、火災から命を守るために、火災の発生を感知し知らせる「住宅用火災警報器」の設置が全ての住宅に義務付けられています。

住宅用火災警報器の効果:

– 早期発見による初期消火の成功率向上

– 夜間の火災発生時の早期避難

– 家族への迅速な知らせ

防災グッズの準備と配置

#### 基本的な消火用具

家庭に備えるべき消火用具:

1. 住宅用消火器(ABC粉末消火器推奨)

2. 消火スプレー(エアゾール式簡易消火具)

3. 消火毛布

4. 防煙マスク

#### 消火器の設置場所

火を使う場所の近くが適当ですが、ガスコンロのすぐ脇ではいけません。実際の火事の時に、消火器に手が届きません。台所の入り口付近の目立つ所が適当でしょう。

効果的な設置場所:

– キッチンの入り口付近

– 玄関近く(近所の人が使えるように)

– 階段の踊り場

– 寝室の近く

定期的な点検とメンテナンス

#### 消火器の点検項目

本体に使用期限などが表示してありますので、定期的に確認しましょう。

月1回の点検項目:

– 消火器の位置と状態確認

– 使用期限の確認

– 安全ピンの状態確認

– 本体の腐食や損傷チェック

#### 住宅用火災警報器の点検

定期的な点検内容:

– 月1回の作動確認

– 電池交換(約10年に1回)

– 清掃(ほこりの除去)

– 設置場所の確認

具体的な体験談と実践例

実際の火災事例から学ぶ教訓

#### 事例1:天ぷら油火災からの学び

ある主婦の方が天ぷらを揚げている最中に電話が鳴り、その対応に気を取られている間に油が過熱し発火した事例があります。幸い、近くにあった消火器で初期消火に成功しましたが、この経験から「調理中は絶対にその場を離れない」という教訓を得ています。

#### 事例2:電気火災の予防成功例

定期的にコンセント周りの清掃を行っていた家庭で、コンセントのほこりが原因となりそうな状況を事前に発見し、火災を未然に防いだケースがあります。この事例は、日常的な点検の重要性を示しています。

家族での防災訓練の実践方法

#### 月1回の家族会議

話し合うべき内容:

1. 避難経路の確認

2. 集合場所の確認

3. 連絡方法の確認

4. 消火器の使い方の練習

5. 火災警報器の作動確認

#### 実践的な訓練内容

具体的な訓練項目:

– 消火器の使い方練習(実際に使用せずに手順確認)

– 避難経路の歩行練習

– 煙を想定した低い姿勢での移動

– 119番通報の練習

専門家からのアドバイスと最新情報

消防士からの実践的アドバイス

消防庁による令和5年の調査では、消防隊の現場到着所要時間は全国平均で約10.3分とされており、発生直後の火災には間に合いません。そのため、初期消火の重要性は非常に高いといえます。

最新の防災技術と製品

#### スマート火災警報器の活用

最新の住宅用火災警報器には、スマートフォンと連動して外出先でも火災を知らせる機能がついているものがあります。これにより、早期発見と対応が可能になります。

#### 自動消火システムの普及

キッチン用の自動消火システムが普及し始めており、センサーが火災を検知すると自動で消火剤を放射する仕組みになっています。特に高齢者世帯での導入が進んでいます。

地域との連携と情報共有

#### 近隣との防災ネットワーク

火災発生時は、近隣住民の協力が非常に重要です。日頃から近所の方との関係を築き、緊急時の連絡体制を整えておくことが大切です。

#### 消防署との連携

地域の消防署が行う防災訓練に参加し、正しい消火器の使い方や避難方法を学ぶことをお勧めします。多くの消防署では、家庭向けの防災講習を定期的に開催しています。

火災対策の費用対効果と優先順位

基本的な防災グッズの費用

必要最小限の投資:

– 住宅用消火器:3,000円〜5,000円

– 消火スプレー:500円〜1,000円

– 防煙マスク:2,000円〜3,000円

– 消火毛布:2,000円〜4,000円

合計で10,000円程度の投資で、基本的な火災対策が可能です。

対策の優先順位

1. 最優先:住宅用火災警報器の設置・点検

2. 次優先:消火器の設置

3. その次:避難経路の確認と家族での共有

4. 継続的:日常的な火災予防習慣の確立

まとめ:家族の命を守るために今日から始めること

火災対策は、一度に完璧を目指すのではなく、段階的に取り組むことが大切です。まず今日から始められることを実践し、徐々に対策を充実させていきましょう。

今日から始める3つの基本行動

1. 住宅用火災警報器の動作確認

– 今すぐ警報器のテストボタンを押して動作確認

– 電池切れの警報音が鳴っていないかチェック

2. 避難経路の確認

– 家族全員で避難経路を歩いて確認

– 夜間の避難も想定して懐中電灯の準備

3. 消火器の点検

– 設置場所と使用期限の確認

– 家族全員に設置場所を知らせる

長期的な火災対策計画

1週間以内に実施すること:

– 家族での火災対策会議

– 消火器がない場合の購入検討

– 緊急連絡先の整理

1ヶ月以内に実施すること:

– 地域の消防署が行う防災訓練への参加申し込み

– 近隣住民との緊急時連絡体制の確認

– 防災グッズの充実

継続的に実施すること:

– 月1回の防災設備点検

– 季節ごとの家族防災訓練

– 新しい防災技術の情報収集

火災は突然発生し、数分で命に関わる状況になる可能性があります。しかし、適切な知識と準備があれば、家族の命を守ることができます。

火災は初期の段階で消火できれば大きな被害の発生を防ぐことができます。いざという時に落ち着いて行動できるよう、消火器などの取り扱い方を確認しておきましょう。

今回お伝えした内容を参考に、ぜひ今日から家族での火災対策を始めてください。小さな一歩が、大切な家族の命を守る大きな力になります。防災は「備えあれば憂いなし」です。日頃からの準備と意識が、いざという時の冷静な判断と行動につながります。

皆さんの家族が火災から守られ、安心して暮らせる環境づくりのお手伝いができれば幸いです。何か不明な点があれば、お住まいの地域の消防署にも気軽に相談してみてくださいね。