フェーンとは、山を越える風が地面に降りてくる際に起こる現象であり、気温が高くなり乾燥した風が吹くことが特徴です。
この現象は、風が山岳地帯を越える際に起こり、風速が増し、天気が急激に変わることもあります。
フェーン現象は、農業や生活などに影響を与える一方、山火事の危険性や風の強さによる被害もあります。
この現象は、世界中で観測され、アルプスフェーンやチヌークなどの地域で特に顕著です。
原因や原理は、乾燥断熱減率と湿潤断熱減率の差に関わるものであり、山岳地帯の気圧配置や季節風と関係しています。
フェーン現象は、気温の上昇や降水量の減少などの影響をもたらすため、その特徴やメカニズムを理解することが重要です。
また、フェーン現象とは逆のボラ現象という現象があり、こちらは風が山を越えることで気温が急に低下する現象であり、地中海沿岸地域ではよく見られます。
この記事ではフェーン現象では具体的な原因や仕組みについて詳しくご紹介します。
フェーン現象とは?
出典:https://www.data.jma.go.jp/cpd/j_climate/hokuriku/column01.html
山を越える風が地面に下りてくると、気温が高くなり乾燥した風が吹く現象
フェーン現象とは、山地を越える風が地面に降りてくる際に起こる現象です。
一般的に、上昇気流が山を越えると、山岳地帯側にあたる風上側では空気が上昇し、冷却されて湿度も高くなります。
しかし、山を越えた風が地面に接触すると、下降気流となります。
この下降気流によって、空気は加熱され、湿度も低下します。
その結果、風下側のふもとでは気温が上昇し、乾燥した風が吹くこととなります。
フェーン現象の特徴的な点としては、風が強くなることや、天気が急激に変わることが挙げられます。
山を越えた風は、地形の割れ目や地形効果によって加速され、風速が増します。
また、下降気流によって空気中の水分が蒸発し、湿度が低下します。
このため、風下側では晴れた青空が広がることが多く、降水量が少ない傾向にあります。
フェーン現象は、風下側において温暖で乾燥した気候が生まれるという点で、農業や生活に大きな影響を与えることがあります。
例えば、フェーン現象が起こる地域では、果樹園やワインの栽培が盛んに行われています。
また、スキーやウィンドスポーツなど、アウトドアスポーツを楽しむ人々にとってもフェーン現象は好都合です。
一方で、山火事の危険性が高まることや、風の強さによる被害が心配されることもあります。
フェーン現象は、山岳地帯に限らず、世界中で観測されています。
代表的な事例としては、アルプス山脈を越える風である「アルプスフェーン」や、ロッキー山脈の風である「チヌーク」が挙げられます。
これらの地域では、フェーン現象が地域の風の特徴や気候を形成する重要な要素となっています。
フェーン現象の原因や原理
出典:https://irokata7.com/2020/07/14/no4-taikino-antei/
フェーン現象は、山岳地帯などで起こる現象で、山を越える風が下降する際に気温が上昇し、空気が乾燥することによって起こります。
山の風上側では、気温が上昇するに従って湿度が上がりますが、山を上昇することで気温が下がるため、雲ができる前までは乾燥しています。
雲ができ始めると、水蒸気が水滴に変わる際に放出される潜熱の影響により、気温の下降が鈍くなります。
一方、山頂から風下側のふもとに風が下りる際には、気温が上昇するため、空気は乾燥します。
このため、山頂での気温より風下側の気温が高くなることがあります。
フェーン現象では、乾燥した空気が上昇する時に気温が下がる割合(乾燥断熱減率)と湿った空気が上昇する時に気温が下がる割合(湿潤断熱減率)の差が関与しています。
乾燥断熱減率は、乾燥した空気の上昇によって気温が100mごとに約1℃下がる割合を示し、湿潤断熱減率は、湿った空気の上昇によって気温が100mごとに約0.5℃下がる割合を示します。
このような温度差によって、フェーン現象が発生し、山を越える風が下降する際には、気温が上昇し、空気が乾燥します。
この乾燥した風は、山麓に到達すると、湿度も下がり、気温が高くなるため、フェーン現象が起こるエリアでは晴天になりやすい傾向があります。
フェーン現象の特徴的な気象条件とは?
フェーン現象は、特定の地形条件において起こる特徴的な気象現象です。
主な特徴的な気象条件は以下の通りです。
1. 山岳地帯
フェーン現象は、山岳地帯で起こることが多く見られます。
大きな山や山脈がある地域で起こりやすいです。
2. 風向き
フェーン現象は、風の向きが特定の方向に向かって吹くことが重要です。
一般的には、風が山から吹いて谷へ向かう方向に起こります。
3. 高温乾燥空気
フェーン現象では、山岳地帯を風が上昇する際に空気が圧縮されて温まります。
このため、フェーン風は温かく乾燥した状態となります。
4. 雨の陰側
フェーン現象は、風が山を越えて下ってくることで発生します。
このため、山の風下側で雨の降っていない乾燥地域で起こりやすいです。
以上が、フェーン現象の特徴的な気象条件です。
これらの状況が揃うことで、温かく乾燥した風が山を越えて下り、地域の気候や気温の変化をもたらします。
フェーン現象は、気圧配置と季節が関係している
フェーン現象は、日本海側でよく見られる現象であり、季節風や気圧の配置が関係しています。
特に晩冬~春や秋~初冬に発達した低気圧が日本海に進んでくると、湿った南よりの強い風が吹き、フェーン現象が起こることがあります。
この現象は、風が山脈や山岳地帯を越える際に起こることが多いです。
風が山にぶつかると、山の風下側に向かって上昇気流が発生します。
その結果、空気は急速に上昇し、山の上に達したところで冷却されます。
この冷却作用によって、水蒸気が凝結して雨雲が発生します。
そして、山を越えた風は山の風下側へ進む際に急速に下降し、下降気流となります。
この下降気流は加熱されたため、乾燥していて温度が上昇します。
そのため、山の風下側では季節外れの高温になることがあります。
夏~晩夏の暑い盛りにフェーンが起こると、特に日本海側で猛烈な暑さが観測されることがあります。
ただし、冬に北西の季節風が吹く場合には、太平洋側でフェーン現象が起こっていますが、気温が低いためにフェーン現象は目立ちません。
気温が低い冬季では、下降気流による加熱効果が弱く、山の風下側でも寒いままとなります。
フェーン現象の影響は、季節や風の強さ、山脈の高さなどによって異なります。
しかし、一般的には日本海側の山岳地帯や盆地において、季節外れの高温や降水の少なさが観測されることが多いです。
フェーン現象は、地域の気候や農業にも大きな影響を与えるため、その特徴やメカニズムを理解することは重要です。
フェーンとボラ
フェーン現象とは、風が山を越えることで気温が上昇する現象です。
一方でその逆の現象となるボラ現象は、寒気が山にせき止められ、気温が急に低下する現象です。
ボラはフェーンと同じように、風が山を越えることで気温が上昇しますが、もともとあった空気が非常に低温の場合、昇温してもふもとよりも気温が低いことがあります。
このため、ボラ現象が起こると、急激に気温が下がることが特徴的です。
さらに、風が斜面を降りる際には、重力や気流の集中により強風になることがあります。
このようなボラによる強風をおろしと呼びます。
おろしは日本でもよく知られており、神戸の六甲山を降りる風が強まる現象で有名です。
このおろしの影響で、神戸市周辺では強い風が吹き、時には建物や街路樹が倒れるなどの被害が発生することもあります。
フェーン現象とボラ現象は、気温の変動や風の強さに大きな影響を与える現象です。
いずれも、気温の急激な変化をもたらす現象ですので、注意が必要である現象と言えます。