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トイレパニックが招く深刻なリスクと、今日からできる備え

トイレパニックが招く深刻なリスクと、今日からできる備え

前回の記事「なぜ避難所で『トイレパニック』が起こるのか」では、震災のたびにトイレパニックが繰り返されてきた背景を整理しました。今回は、トイレを我慢することが実際にどれほど深刻な健康リスクにつながるのか、そして被災経験者の証言、今日からできる備えについて、詳しくまとめます。

「トイレを我慢する」ことが引き起こす深刻なリスク

災害用トイレの製造にたずさわる企業の社長は、能登半島地震の際の取材に対してこう指摘しています。

トイレに行くのが嫌だと、飲まず食わずになる。
―仮設トイレ製造会社社長(関西テレビ「避難所では『トイレ』が大問題」2024年1月9日)

トイレが汚い・暗い・遠い・行列ができている、といった状況が重なると、人は無意識のうちに水分や食事を控えるようになります。その結果として起こりうるのが、次のような健康被害です。

①脱水症状・体力低下
水分摂取を控えることで、脱水症状や体力低下が進みます。特に高齢者は、意図的にトイレの回数を減らそうと水分を控える傾向が強いと指摘されています。

②深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
水分不足で血液がドロドロになり、車中泊や雑魚寝で長時間同じ姿勢を続けることが重なると、足の血管に血の塊(血栓)ができやすくなります。この血栓が肺に飛ぶと、命に関わる肺塞栓症を引き起こすことがあります。2016年の熊本地震では、この行動パターンが要因となってエコノミークラス症候群で亡くなった被災者がいたことが報告されています(前掲・関西テレビ、2024年1月9日)。

③脳梗塞・心筋梗塞のリスク上昇
脱水は血液の粘度を高めるため、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを押し上げる要因にもなるとされています。

④災害関連死
熊本地震(2016年)では、災害関連死とされた228人のうち約8割が、肉体的・精神的ストレスを原因とするものでした。トイレを我慢する生活の積み重ねも、こうしたストレスの一因になり得ます。

※症状の医学的な判断や治療については、必ず医療機関・救急隊(119番)にご相談ください。本記事は一般的な知識の紹介であり、個別の診断を目的としたものではありません。

特に深刻な影響を受けやすい人たち

トイレパニックの影響は、誰にとっても等しく重いわけではありません。

女性は、人目を避けようとして早朝に並ぶ、夜間は一人で行かず同行者と連れ立って行く(いわゆる「連れション」)といった行動が、東日本大震災・能登半島地震それぞれの調査・取材で報告されています。2024年の能登半島地震を取材した女性記者も、「被災地にいた1週間は水分を控えていたためか、便秘気味だった」と証言しています(東京新聞デジタル、2024年1月27日)。

高齢者は和式トイレや段差のある仮設トイレの利用が難しく、屋外のトイレまで長い距離を往復せざるを得ないケースが、熊本地震(2016年)の避難所で数多く報告されました。子どもにとっては、暗く不衛生な仮設トイレへの恐怖心も無視できない問題です。

熊本市出身で、実際に熊本地震(2016年)を経験した田中森士さんは、避難した公園で備蓄の簡易トイレがすぐに底をついた体験を、次のように振り返っています。

公園の土にスコップで穴を掘り、板を2枚渡して簡易的なトイレを作った。
―田中森士(Yahoo!ニュース エキスパート「熊本地震から10年」2026年4月15日)

テントで覆い見張りを立てるなど、プライバシーの確保にも苦労したといいます。田中さんは「女性や子どもたちにとって、トイレに行けないことは極めて切迫した深刻な問題である」と述べ、熊本市上下水道局の担当者も「大災害時、トイレは場所を問わず必ず問題になる。普段から各人が対応を考えておくべき」と警告しています。

水筒とコップ、携帯トイレのポーチが並ぶ、水分補給の大切さを表すイメージイラスト

今日からできる備え

行政の備えだけに頼らず、個人・家庭レベルでも備えておくことが、トイレパニックから身を守る一番の近道です。

①携帯トイレ・簡易トイレを備蓄する
田中さんの記事では、1人あたり1週間で35回分の携帯・簡易トイレの家庭備蓄が推奨されています。断水は数日で終わるとは限らず、東日本大震災では3日以内に仮設トイレが行き渡った自治体は全体の3割強にとどまりました。1週間分を目安に備えておくと安心です。

②発災後すぐに使える場所に置いておく
日本トイレ研究所の調査では、発災後6時間以内に多くの人がトイレに行きたくなることが分かっています。備蓄品は倉庫の奥ではなく、玄関や寝室など、すぐ取り出せる場所に置いておきましょう。

③水分・塩分補給は我慢しない
トイレを気にして水分を我慢するのは、脱水やエコノミークラス症候群のリスクを高める行動です。トイレの心配を減らす備え(携帯トイレ)とセットで、水分・塩分補給は普段どおり続けることが大切です。

④自治体の備蓄状況を確認しておく
2024年の東京新聞の取材では、最大規模の災害時に自治体の備蓄が「足りる見込み」と回答した自治体は約31%にとどまっていました。お住まいの自治体がどの程度の備蓄を持っているか、ハザードマップとあわせて一度確認しておくことをおすすめします。

紘一のひとこと:
トイレの備えは、防災グッズの中でも後回しにされがちだと感じます。ですが今回調べてみて、「水や食料より先に、トイレの問題がやってくる」という調査結果には正直驚きました。ご家庭に携帯トイレがまだない方は、この記事をきっかけに、まずは1〜2個だけでも備えてみていただければと思います。

まとめ

  • トイレを我慢することは、脱水症状・エコノミークラス症候群・脳梗塞や心筋梗塞のリスク上昇・災害関連死につながりうる
  • 女性・高齢者・子どもは特に影響を受けやすく、実際の震災でも我慢や工夫を強いられた証言が多く残っている
  • 備えの目安は「1人1週間で35回分」の携帯・簡易トイレ。すぐ取り出せる場所に置いておく
  • トイレの備えをした上で、水分・塩分補給は我慢しないことが健康を守る鍵になる

※本サイトは、東日本大震災を経験した設定の運営者が独学で集めた防災知識を発信する個人ブログです。医療・法律・行政の専門的判断が必要な場合は必ず専門機関・自治体の情報をご確認ください。専門家の見解を引用する際は必ず出典を明記しています。本記事の健康リスクに関する内容は一般的な知識の紹介であり、実際の症状に応じた医学的判断は医療機関・救急隊にご相談ください。

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